さて、前回ご紹介した氣の実験の結果はいかがでしたか?一人一人感性が異なるのに加えて、行う時間帯やその日の体調によっても結果が変ります。それではもう一歩進めてみましょう。実験中になんとなく感覚が起きてきたら、術者も被験者も被験者の弱い個所、例えば腰や胃などに意識をもって行きます。すると、痛みや不快感が緩解することを経験するかもしれません。このような意識の持ち方が「氣を操作する鍼灸医学」の原点であります。
氣を意識する
目には見えない氣というものを意識するということは、なかなか難しいことです。風も目に見えない氣の一種です。しかし例えば星条旗が風になびくという現象を見ることによって、「あ、風が吹いているな」とわかります。このように有形の物の状態を見ることによって無形の目に見えない風を知ることができます。形のあるものの状態を観察したり、うまくコントロールすることによって「氣」の動きがわかるということです。
恋も気の作用?
我々は鍼灸という道具と、漢方薬を東洋医学的に使用することによって治療を行います。とくに鍼灸という手段だからこそこの「氣」の動きがわかる ... という利点をもっています。多くの方々は鍼は刺すものと思われていて、グサッと入らなければいけないと思っているのではないでしょうか。治療行為というものは必ず刺さなければいけないというものではなく、時として鍼が触れるだけでからだが変化することさえあるのです。お灸などもそうですが、例えば赤ん坊のような敏感な生態にはモグサを置くだけで変化がおきる場合があります。人は手を添えるだけでなにかを感じるわけですし、みつめあうだけで幸せを感じて、イキイキしてくるなどということがあるわけです。
ツボを活性化する
こういうことだけで変化が起きるのなら、鍼やお灸のモグサを置く場所が然るべき意味を持った「ツボ」ということであれば、なおさらの効果が期待できるのです。氣が正しく動けばよいのです。逆に氣が動かない状態では、いくらお灸をすえても熱さも感じず火傷もしないということもあるのです。そして、氣が動いて患部が活きてきますと熱さを感じるようになってくるのです。
マイルドな日本の東洋医学
とくに日本で教育を受けた我々鍼灸師の多くは、東洋医学的な科目と西洋的な解剖学、生理学、病理学等の学習だけでなく、この微妙な氣の動きを読むということにこだわるのです。逆にこの氣の動きを察知しょうという意識をもたずに鍼灸を行うとすれば、それは非常に粗暴な治療になると考えられます。現在もそうですが、私がカリフォルニアの鍼灸漢方の免許を受験したときは、患者の体格や年齢に関係なく疾病によって鍼を刺す場所や深さや角度が一定に決められていました。そして使用する鍼も太く、まるでお刺身を電気ノコギリでさばくような刺激の強い治療法に思わず閉口したものです。生態の変化、氣の動きを察知する姿勢をもって、意識を使い分けて、治療を行うのが日本的な鍼灸の特徴です。この意識というもの、感性というものを使うことによって、皆様自身でも程度の高い癒しを行うことが期待できます。意識を意識しながら氣の感覚を体験してみましょう。
第一回 日本伝統医学から健康を考える(1)
第三回 日本伝統医学から健康を考える(3)
第四回 日本伝統医学から健康を考える(4)
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